それどころじゃあないのだけれど
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


山野だけじゃない、
街なかでも あちこちで紅葉が始まってはいるものの、
昨年同様、なかなか秋物をまとえない日和が続いていたものが。
不意なこととて木枯らしも吹いて、
ようやく“秋めいて来たねぇ”なんて口に出来る気候になった…筈が。

 「何ですか、太平洋高気圧が活発化しているそうで。」
 「………?」
 「そうですよね、久蔵殿。
  太平洋高気圧って、
  それって夏の風物詩じゃなかったですか?」

今年もあまりに酷い暑さの夏だったものだから、
風の流れや海流に癖になって居残ってるものでもあるものか。
またもや昼間の気温がぐんぐんと上がる11月の初めになるのだそうで。

 「そいや先週にも、
  何だか暑くて堪らない日がありましたものね。」
 「………。(頷、頷)」
 「この時期だってのにアイスが食べたくなるほどにね。」

  このまま日本は亜熱帯になっちゃうんでしょうかね。
  さて、それにしちゃ先の冬も途轍もない大雪が降りましたよ?
  ………。(頷、頷)

なんてな、
およそ女子高生とは思えない、
少々じじむさい会話を交わしているものの。
てきぱき動いている手元は、何とも可愛らしいものへの作業で忙しく。

 「あ、すいませんヘイさん、ここ押さえててもらえませんか?」
 「あらまあ、可愛らしいネコ耳ですね。」

取り付けたおまけの重みで、
カチューシャでは ずり落ちる恐れがあるので、
ビロウドのリボンで鉢巻き仕様にしたんですよ、と。
編み物やお洋服のリメイクが得意な白百合様、
相変わらずの器用さでこさえたらしいアイテムを、
ふわふかな金の綿毛が乗っかっている、
紅バラ様の頭へと巻き付けてやっており。

 「久蔵殿ったら、
  フランケンがいいなんてリクエストするんですよ。」
 「まあ、何ですかそりゃ。」

無口なところが楽でいいからですってと七郎次が苦笑をし、
それはまた、久蔵殿らしいことですが…と、
ひなげし様こと平八が“ありゃまあ”と苦笑で返す。

 「女の子がこめかみにボルトってのも、
  意表を衝いてて面白いかもですが。
  久蔵殿ほど かあいらしいお人がそれはない。」

というワケでと、七郎次が用意したのは、
フェイクファーが縁取りにふんだんに使われていることで、
ペチコートを重ねずとも自然とフレアを生んでいる、
ビロウドのミニスカートに、
スクエアカットされた襟ぐりから、
色白な肌を見せているトップスも ちょっぴりせくしぃだが。
手首をファーが取り巻く黒い手套は、
手のひらに肉球代わりの丸いアップリケつきで。
ボアのお尻尾から察するに、
狼男ならぬ、黒猫娘というところかと。

 「ヘイさんは…あらま、かわいいvv」
 「えへへぇvv」

ゴロさんが縫ってくれましたと、
それもまた驚きの、そりゃあ可愛らしい衣装は、
やはりサテンとオーガンジーレースとで、
二重になったミニスカートがキュートな、
少し前のアイドル歌手か着せ替え人形のような仕立て。
華やかなシフォン使いの
パフスリーブから伸びるすんなりした腕には、
こちらさんもレースの手套と、スリムな金塗りのタクトが1本。
全体的に茶系でまとめられてはいたけれど、
そんな彼女をまじまじ見やっていた久蔵、短い一言で評したのが、

 「ティンカーベル。」
 「おお、さすが久蔵殿♪」

たちまち平八が満面の笑みになり、
ティンクは緑の衣装じゃなかったですかって訊いたんですけど、
秋だからそれらしい色にしたんですってvvと。
小さな肩をすくめて、ふふふvvと嬉しそうに微笑って見せる。
そんな二人への着付けのお手伝いをする七郎次も、
手際よく自分の仮装を身にまとう。

 「おおお、何かお茶目じゃないですかvv」
 「………♪(…かわいいvv)」

サテン地のワンピースも短めのマントも、
肘丈の手套も先の尖ったつばつき帽も、
スリムなブーツも黒づくめの、魔女っ子のコスチュームであり。
ニーハイ丈のブーツの上にちらりと覗く、
真っ白いお肌の“絶対領域”が、
絶妙な色香を振り撒いていて、

 「これは、勘兵衛さんがお気の毒かもですね。」
 「……。(頷)」

それぞれに年の差がある想い人のいるところまでお揃いの、
何とも仲良しな3人娘の中でも、
相手の職業柄とはいえ、
一番逢う機会を作れない間柄だという、切ない状況がそうさせるのか。
元は子爵の血統をひく、日本画家・草野刀月の秘蔵っ子で、
現在通う女学園では“聖女様”とまで呼ばれているお嬢様…の筈が。
どういう好みか、
少しでも身を倒すとパンチラしかねぬミニスカートだの、
胸元間近の透き通るような白い肌に浮かぶ、
華奢な鎖骨を惜しげもなくあらわにするよなカットソーなんぞを、
大胆にもお召しになる傾向の強い、
冒険心旺盛なお人だったりするもんだから。
随分と年上、分別盛りの恋人さんであれ、
毎度毎度 手持ちの理性で支えるのは大変だろうなという同情を、
選りにも選って、その彼女のお友達からさえ集めているほどだとか。

 「な、なんですよぉ。」

  アタシばっかり はしたないよな言いようはしないで下さいな。
  でも、シチ…。
  そうですよ、シチさん。

ぷうと膨れる白百合さんへ、
どうどうどうと、いなすついで。
そんなに問題起こしたいの?と、小首を傾げるのが久蔵ならば、

 「18歳以下の青少年へのふしだらな行為は、
  刑事罰を食らう昨今ですからね。」

 「ヘイさん…。」

情緒もへったくれもない言いようをするひなげしさんには、
さすがに 熱血“進展したいぞ”ヲトメも少々鼻白んだご様子であり。

  別に…問題を起こしたいって訳じゃあ。
  ええ、判っておりますよ。
  …、…、…。(頷、頷、頷)

前世という記憶がよみがえり、
そっちの意識の中でも好いたらしいと思ってたお人と
こうまで間近に再会出来ていたのにね。
こっちが揃って女子高生なのと呼吸を合わせたか、
そちらも揃って大人な皆さんは、
いつまでもどこまでもこちらを子供扱いするもんだから。
ただでさえ恋愛に憧れの強いお年頃、
自分たちにはそうまで魅力がないものか、
それともあそこまで大人だと、女の趣味も熟すのか…なんて。
大きなのっぽの勘違いをしたまま ひた走る16歳のヲトメたちなのであり。
そして今宵は……

 「さあさ、ハロウィンの晩がそろそろ始まる。」
 「そうでしたね。」
 「………♪」

今夜は世に言う“ハロウィン”、万聖節の宵祭り。
カレンダーの上じゃあ平日の晩ではあるが、
今週の半ばから幕を開ける学園祭の準備に追われ、
ややハイになってるほど忙しいお嬢さんたちへのねぎらい半分。
大人の皆様からの見守りの中、
夜更かししても善し…という集いを設けていただいていて。

 「ゴロさんがおいしい料理とケーキを作っておいでですvv」
 「ウチのシェフも。」
 「ああでも、食べ過ぎちゃう前に、
  新しいレパートリ、演奏して見せなきゃねvv」

皆で騒げる宴だってだけじゃあなくて。
色々と忙しい秋になって、
落ち着いてお顔を合わす余裕の減った想い人の
間近に身をおいて過ごせる甘い刻。
せめて しみじみ堪能しましょと、弾む心は隠せない。

 「お嬢さんたち、支度はまだかかるのかな?」
 「あ…は〜い、今 行きます〜♪」

三木さんチのリビングをお借りしての仮装の宴。
どうかお心の方は、
偽らないで、はぐらかさないでとの切なる想いを抱きしめて。
それぞれ愛らしく化けたお嬢様たちが、
ぱたた…と軽やかに飛び出してった、晩秋の宵でした。





  〜Fine〜 11.10.31.


  *ちょこっと“ういぃ”で遊び過ぎてます。
   リゾートアイランドに自分の旗つき別荘が持てたところです。
   まだ1週間ほどで、どんだけやり込んでんだという話です。
(苦笑)

   ホントはちょっとした事件をからめるつもりでしたが、
   残念なことには時間ぎれで、
   保護者の皆様には全然“残念”なことじゃあないかもですが、
   私には やや残念…。
   うんうん、次で頑張りますね?

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